台湾法上の「減資」について

いわゆる「減資」とは、会社がその資本額を減額し、かつ株式数を減らす行為を指す。会社が減資を行う理由は主に二種類あり、ひとつは会社の欠損が深刻なときに、財務構造の改善を目的として、減資を通じて累積欠損を解消するためである。もうひとつは、会社が保有する現金が多すぎ、適切な投資対象もないときに、減資の方法を通じて現金を株主に返還するためである。実務上、一般的に前者の理由によることが多い。

株式会社が減資を行う場合、同時に会社の定款を変更しなければならないため、台湾の会社法第277条に従い、当該減資について株主会(株主総会)の特別決議を行わなければならない。これはすなわち、特別決議において、発行済み株式総数の3分2以上を代表する株主の出席、出席株主の議決権の過半数の同意が必要であることを意味する。

次に、同法第73条には「(第1項)会社が合併を決議した場合、直ちに賃借対照表および財産目録を作成しなければならない。

(第2項)会社は合併の決議をなした後、直ちに各債権者にそれぞれ通知および公告を行い、かつ30日以上の期限を指定して、債権者が期限内において異議を申し出ることができる旨を表明しなければならない。」と規定され、同法第74条には「会社が前条の通知および公告を行わない場合、又は指定された期限内に異議を申し立てた債権者に対して弁済を行わず、又は相当する担保を提供しなかった場合、その合併をもって債権者に対抗してはならない。」と規定され、さらに同法第281条には「第73条及第74条の規定は、資本の減少に適用する。」と規定されている

従って、株式会社が減資の決議を行う場合、賃借対照表および財産目録を作成し、各債権者にそれぞれ通知および公告し、かつ30日以上の期限を指定して、債権者が期限内に異議を申し立てることができる旨を表明しなければならず、そうしない場合は、減資をもって債権者に対抗することができない。

実務上よく起こる問題として、会社のサプライヤーは会社の「債権者」となるのかという問題がある。

これについて台湾法上、明確な規定はないが、経済部は「会社がサプライヤーに対し全額支払っていない商品代金がある場合、当該商品代金が遅延しているか否かにかかわらず、当該サプライヤーはいずれも会社法第73条の「債権者」に該当し、会社は減資の決議を当該サプライヤーに通知しなければならず、そうしない場合、減資をもって当該サプライヤーに対抗することができない。」と示している。

なお、ここでいう「減資をもって当該サプライヤーに対抗することができない」とは、会社は減資を行った後、会社の資本金不足を理由として、サプライヤーに対し商品代金の支払いを拒否してはならないことを指す。

実務上、会社によっては、サプライヤーが会社の財務状況を不安視することを懸念して、各サプライヤーに減資の通知をすることを望まないケースもあるので、注意が必要である。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修