第20回 バーチャルオンリー株主総会について(産業競争力強化法改正)

政府はバーチャルオンリー株主総会の開催を許容するための産業競争力強化法改正案(以下、「産競法改正案」)を決定し、国会に上程することにしました。

1 上場会社がバーチャルオンリー総会を開催するための要件

改正法によれば、上場会社がバーチャルオンリー株主総会を開催するための要件は、

①「株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定める」要件(適用要件)を充足する旨の経済産業大臣(経産大臣)及び法務大臣の「確認」を得た上で、
②株主総会をバーチャルオンリーの方法で開催することができる旨を定款で定めること

とされています。

この規定により、株主総会をバーチャルオンリー(「場所の定めのない株主総会」)の方法で開催することができることとなります。

また、令和3年6月の株主総会に間に合うように、改正産競法の施行後2年間の株主総会については、経産大臣及び法務大臣の「確認」を得ることでバーチャルオンリー株主総会を開催できる旨の定款規定 (「バーチャルオンリー許容規定」)が存在するものとみなされるため(みなし定款規定)、定款変更手続をすることなくバーチャルオンリー株主総会を開催することが可能となります(産競法改正案附則3条1項)。

2 みなし定款規定

2年間の特例期間中は、経産大臣及び法務大臣による「確認」を得れば定款変更することなくバーチャルオンリー株主総会を開催することができますが、バーチャルオンリーの方法で開催された株主総会においては、バーチャルオンリー許容規定を新設する旨の定款変更をすることはできないとされています(産競法改正案附則3条2項)。

したがって、2年間の特例期間中であっても、定款にバーチャルオンリー許容規定を設けるためには、経産大臣及び法務大臣による「確認」を得た上で、バーチャルオンリー株主総会ではない、リアル総会、またはハイブリッド出席型(又は参加型)バーチャル株主総会を開催した上で、バーチャルオンリー許容規定を新設する旨の定款変更手続を行う必要があります。

なお、産競法改正案が国会で成立して、本年5月中に公布・施行された場合には、2023年5月中に2年間の特例期間が終了するため、本年(2021年)はリアル株主総会を開催し、来年(2022年)にバーチャルオンリー株主総会を開催した場合、来年(2022年)の株主総会ではバーチャルオンリー許容規定を新設する旨の定款変更ができません。

そこで、本年はバーチャルオンリー株主総会の方式で総会を開催しない場合でも(かつ、将来バーチャルオンリー株主総会を開催する予定がなくても)、経産大臣及び法務大臣による「確認」を得た上で(又は、「確認」を得ることを条件として)、本年6月の定時株主総会で、定款にバーチャルオンリー株主総会を開催できる旨の規定を追加する定款変更の手続を行うことも検討してはいかがでしょうか。

今年は令和元年改正の会社法が施行されて以来の最初の株主総会です。
ご質問があれば弊所へご連絡下さい。


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執筆者

パートナー弁護士 飯田 直樹