第25回 バーチャルオンリー株主総会について(2022年株主総会に向けて)

 バーチャルオンリー株主総会の開催を許容する産業競争力強化法(以下、「産競法」といいます)が施行されました。

1 バーチャルオンリー株主総会を開催するための要件(産競法66条1項、2項、省令1条・2条)
①「上場会社」であること

②「株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定める」要件(適用要件)を充足する旨の経済産業大臣及び法務大臣の「確認」を受けること(「確認」の窓口は経済産業省です。)

【適用要件】
  (i)   通信の方法に関する事務の責任者の設置
  (ii)  通信の方法に係る障害に関する対策についての方針の策定
  (iii) 通信の方法としてインターネットを使用することに支障のある株主の利益の確保に配慮することについての方針の策定
  (iv) 株主名簿に記載・記録されている株主の数が100人以上であること

③「定款の定め」があること
 株主総会(種類株主総会を含む。)を場所の定めのない株主総会とすることができる旨の定款の定め
ただし、2021年6月16日の施行から2年間は、②の「確認」を受けた上場会社については、「定款の定め」があるものとみなすことができます。

④招集決定時に「適用要件」を充たしていること
  両大臣の「確認」時だけでなく、場所の定めのない株主総会の招集決定時にも「適用要件」を充たしていることが必要です。なお、招集決定時においては、招集決定者「適用要件」が確認すれば足ります。

2 みなし定款規定
 2年間の特例期間中は、経産大臣及び法務大臣による「確認」を得れば定款変更することなくバーチャルオンリー株主総会を開催することができますが、バーチャルオンリーの方法で開催された株主総会においては、バーチャルオンリー許容規定を新設する旨の定款変更をすることはできません (産競法附則3条2項)。

3 バーチャルオンリー株主総会の招集決定事項
バーチャルオンリー株主総会を招集するには取締役会で次の事項を決定します。

①リアル総会と基本的に同様の招集決定事項(会社法298条1項各号)
 ただし、リアル総会の場合の「場所」にかえて「株主総会を場所の定めのない株主総会とする旨」を決議することになります。

②「株主の利益の確保に資するものとして経済産業省令・法務省令で定める事項」(産競法66条2項)
  ・書面投票制度の採用
  ・通信方法
  ・議決権の事前行使と当日行使の重複行使の取扱い

4 バーチャル株主総会の招集通知記載事項
バーチャル株主総会の招集通知には次の事項を記載します。
① 招集決定事項
② 株主がバーチャルオンリー株主総会の議事における情報の送受信をするために必要な事項
③ 通信障害等への対策方針及びデジタルデバイド配慮方針の概要

5 まとめ 
 2021年6月総会では、ハイブリッドバーチャル総会を実施した会社が305社(2020年6月は99社)、特例によりバーチャルオンリー株主総会を開催した会社は3社ありました。
 また、バーチャルオンリー株主総会の定款変更を行った会社が24社ありました。
 バーチャルオンリー株主総会の開催の予定がない場合でも、将来の選択肢のためにバーチャルオンリー許容規定を新設する旨の定款変更手続を行うことは合理的な対応だと考えられます。


*本記事は、法律に関連する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者

パートナー弁護士 飯田 直樹