第416回 小切手の期限が過ぎた場合

 台湾では小切手も支払い手段の一つですが、小切手には期限があり、期限が過ぎることもあります。小切手の期限が過ぎたらどうすればいいのでしょうか?
 小切手には「支払呈示期間」、「遡求(そきゅう)権の時効」、「小切手の権利の時効」という期限があるため、小切手の期限が過ぎるケース別に考えなければなりません。

発行1年経過で支払い拒否

1.支払呈示期間 
 支払呈示とは、支払人に小切手を呈示し、小切手に記載されている金額の支払いを請求する行為をいいます。台湾の票據法第130条の規定によりますと、「振出地と支払地が同一の省(市)区内にある場合は、振り出してから7日以内、振出地と支払地が同一の省(市)区内にない場合は、振り出してから15日以内、振出地が海外にあり、支払地が域内にある場合は、振り出してから2カ月以内」とされています。

 支払呈示期間を過ぎて呈示した場合、同法第136条本文の規定により、支払人は支払うことができます。一方、同条ただし書によりますと、振出人が呈示期間経過後に支払いの委託を取り消した場合、または小切手の発行から既に1年以上経過している場合、支払人は支払いを拒否することができるとも規定されています。

2.遡求権の時効
 いわゆる遡求権とは、振出人、裏書人に小切手に記載されている金額の支払いを請求する権利をいいます。小切手の所持人は、「支払呈示期間内に呈示」したものの、支払人に拒絶され、かつ支払いを拒否された日から5日以内に「拒絶証書の作成の請求」をして初めて振出人、裏書人に対し遡求権を有することができます。

 遡求権の時効については、拒絶証書作成日から起算して4カ月であり、期限内に行使しなければ、遡求権は消滅します。つまり、裏書人に支払いを請求することができなくなります。

3.小切手の権利の時効
 小切手の権利の時効とは、小切手全体の権利の効率性に関していうものです。振出日から起算して1年以内に小切手の権利を行使しなければ、小切手の権利は消滅します。ただし、所持人に小切手の振出人または小切手に記載されている他の者(例えば裏書人)に対する債権債務関係が実際に存在している場合、この小切手は債権の存在を証明するものとすることができます。また、振出人に依頼して小切手の再発行を依頼するという対処法は考えられると思います。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。