第262回 台湾法上の製造物責任

まず、台湾における製造物責任に関する法律は、「民法」および「消費者保護法」に定められていますので、日本のような独立した製造物責任(PL)法はありません。以下は台湾法上の製造物責任に関する主な関連条文です。

1.民法第191条の1:「(第1項)商品製造人がその商品を通常使用あるいは消費した他人に損害を与えた場合、賠償責任を負う。ただしその商品の生産・製造あるいは加工・設計に欠陥がないとき、あるいはその損害が当該欠陥によるものではないとき、あるいは損害の発生防止に相当の注意が払われていたときは、この限りではない。(第2項)商品製造人とは、商品の生産・製造・加工業者である。商品上の標章その他文字・符号により、自身が生産・製造・加工したとみなされるとき、商品製造人とみなす。(第3項)商品の生産・製造あるいは加工・設計につき、説明書あるいは広告内容と符合しないときも、欠陥とみなす。(第4項)商品輸入業者は、商品製造人と同一の責任を負う」。

2.消費者保護法第7条:「(第1項)商品の設計・生産・製造あるいはサービス提供に従事する企業経営者が、商品を市場で流通させたり、サービスを提供したりするとき、当該商品あるいはサービスが、当時の技術あるいは専業水準からみて合理的に期待できる安全性を備えていることを確保しなければならない。(第2項)商品あるいはサービスに、消費者の生命・身体・健康・財産に危害を及ぼす可能性があるとき、明確な場所に警告表示および緊急処理の方法を明記しなければならない。(第3項)企業経営者が前二項の規定に違反し、消費者あるいは第三者に損害を与えたとき、連帯賠償責任を負わなければならない。ただし企業経営者がその無過失を証明したとき、裁判所はその賠償責任を軽減することができる」。

三つの要件の充足必要

次に、台湾法上、製造物責任の成立には、基本的に下記の三つの要件を同時に満たさなければなりません。

1.製造物に瑕疵(かし)があること。「瑕疵」とは通常、「設計上の瑕疵」(例えば、自動車のエアバッグの設計不良により、交通事故発生時にエアバッグが開かなかった場合)、「製造上の瑕疵」(例えば、メーカーが自動車組み立て時にブレーキシステムを確実に据え付けず、テストしなかったことにより、車両走行時に緊急ブレーキが利かなかった場合)、「指示上の瑕疵」(例えば、定員10人のエレベーターに、業者が内部に確実に表示や警告を行っていなかったことにより、15人がすし詰め状態で乗った後、エレベーターが荷重に耐えきれずに落下した場合)等を指します。

2.消費者が損害を受けていること。

3.製造物の瑕疵と消費者の損害との間に因果関係があること。

また、上記民法および消費者保護法における、製造物責任の関連規定によれば、製造物責任を負う者には、実際に製造および加工に従事している者のほか、商品上の商標を保有する者、輸入業者、商品を改変したり、小分けしたりする業者、販売業者なども含まれていますので、ご注意ください。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。