第276回 飲酒運転の法的責任

今年1月11日の深夜、日本人の男Aが酒に酔った状態で自動車を運転した上、事故を起こし、台湾人の親子3人にけがを負わせました。事故現場に駆け付けた警察官がAに対してアルコール検査を行ったところ、呼気1リットル当たりのアルコール量は0.85ミリグラム(mg)に達していました。士林地方検察署は3月6日、Aを公共危険罪で起訴しました。

アルコール量次第で刑事罰も

刑法185条の3第1項柱書および第1号により、呼気1リットル当たりのアルコール量が0.25mg以上(または血中アルコール濃度が0.05%以上)の状態で自動車を運転する行為には、公共危険罪が成立し、2年以下の有期懲役に処せられ、また、20万台湾元(約71万円)以下の罰金が併科されることがあります。同規定は電動自転車にも適用され、さらに、場合によっては電動アシスト自転車についても適用されます。

さらに、当該行為により人を死亡させた場合には、3年以上10年以下の有期懲役、重傷を負わせた場合には、1年以上7年以下の有期懲役に処せられます(同条第2項)。

今回のケースでは、事故直後のAの呼気1リットル当たりのアルコール量が0.85mgに達しており、基準値を優に超えているため、少なくとも公共危険罪が成立すると考えられます。

ビール中瓶1本で行政罰

道路交通安全規則第114条柱書および第2号において、呼気1リットル当たりのアルコール量が0.15mg以上(または血中アルコール濃度が0.03%以上)の状態で自動車を運転してはならないとされています。そして、この基準値を超えて運転した場合、道路交通管理処罰条例第35条第1項柱書および第1号により、1万5,000元以上9万元以下の過料に処せられます。さらに、運転免許の停止・取り消しなどについても規定されており、事故の有無や程度により処分の重さが異なります。

個人差がありますが、ビール中瓶1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯、焼酎0.6合程度で呼気1リットル当たりのアルコール量が0.15mgになります。

なお、上記基準値を超えた状態で自転車を運転した場合にも、道路交通管理処罰条例第73条第1項柱書および第7号により、300元以上600元以下の過料に処せられます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。