第277回 不当労働行為について

いわゆる「不当労働行為」とは、労働者の労働組合活動などの集団行為に対する使用者の不当な侵害行為を指し、具体的には主に、下記の労働組合法第35条第1項の5つの行為である。

「使用者または使用者を代表して管理権を行使する者は、次に掲げる行為をしてはならない。

一.労働者が労働組合を組織し、労働組合に加入し、労働組合活動に参加し、または労働組合の職務を担当したことにより、雇用を拒否し、解雇し、降格・転任させ、減給し、またはその他の不利益な取り扱いをすること。

二.労働者または求職者に対し、労働組合に加入しないこと、または労働組合の職務を担当しないことを雇用条件とすること。

三.労働者が団体交渉の要求を申し入れ、または団体交渉に関する事務に参加したことにより、雇用を拒否し、解雇し、降格・転任させ、減給し、またはその他の不利益な取り扱いをすること。

四.労働者が争議行為に関与し、または争議行為を支持したことにより、解雇し、降格・転任させ、減給し、またはその他の不利益な取り扱いをすること。

五.労働組合の設立、組織または活動につき不当に影響を及ぼし、妨害し、または制限すること。」

最高30万元の過料

労働者は、使用者が上記の不当労働行為をしたと認める場合、労使争議処理法第44条以下の規定に基づき、労働部の「不当労働行為裁決委員会」に裁決を申請することができ、同委員会は、受理した後、使用者が不当労働行為に該当するか否かにつき調査を行い、「申し立てを棄却する」、「一定の行為をするか、または一定の行為を停止するよう使用者に要求する」といった旨の裁決という決定を行う。

使用者が当該決定に従って行わない場合、労働部が使用者に対し6万台湾元(約21万6,000円)以上30万元以下の過料などのさまざまな懲罰的な処分を行う。

労働部の統計によれば、2018年に労働部が受理した台湾全体での不当労働行為案件は計79件であり、審理が完了している44件のうち、29件(約66%)が不当労働行為裁決委員会により使用者による不当労働行為が成立すると判定されている。

台湾において、労使紛争が発生した場合、裁判所であれ、行政機関であれ、労働者の利益に偏った処理を行う傾向があるが、企業が労働法および交渉を熟知する法律専門家に委託して処理を行わせれば、勝訴または和解で決着させる可能性を大幅に引き上げることができる。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。