第293回 台湾の原産地認定について

国際貿易摩擦が激化する中、原産地の変更を検討する業者が増えると考えられます。台湾の原産地認定に関する規定を下記の通り紹介します。

輸入貨物の原産地認定

台湾の「輸入貨物原産地認定標準」第5条2号によれば、複数の国・地域で生産、加工された貨物については「最終的に実質的改変を完了した」国・地域が原産地となります。「実質的改変」の完了に関する判断基準は、同標準第7条で、輸出入税則で定める6桁の税目分類番号の変更を基本的な基準とし、税目分類番号の変更が実質的改変を反映できない場合、価格に照らした「付加価値率」を補充基準とすることになります。この「付加価値率」は次の公式に基づき算出し、35%以上となることを基準とします。

{貨物の輸出価格(F.O.B.)-直接または間接に輸入した原材料および部品の価格(C.I.F.)}/貨物の輸出価格(F.O.B.)

ただし、以下の場合には「実質的改変」とは認められません。

  1. 輸送または保管期間中に必要な保存作業
  2. 商品を市販または輸送するために行われる分類、等級付け、梱包(こんぽう)、再梱包、マーキングまたは再ラベリング
  3. 商品の結合または混合の作業で、結合後または混合後の商品と、結合または混合する商品の特性に大きな違いが生じないとき
  4. 簡単な切断、接続、製造または組み立て等の加工作業
  5. 商品の性質を変えない簡単な乾燥、希釈または濃縮作業

違反した際のリスク

輸入貨物の原産地を偽装した場合、消費者保護法、商品表示法、貿易法および税関密輸取り締まり条例に違反する可能性、刑法の商品に対する虚偽の表示を行った罪を構成する可能性があり、消費者による賠償請求、当局による過料処分、貨物に対する没収処分、輸出入を停止させる処分、または刑事罰に該当するリスクがあります。

よって、上記リスクを回避するため、貨物の原産地を変更して輸入、販売する際は、当局または現地の弁護士に相談することをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。