第308回 大法廷制度の実施

最高行政裁判所の各小法廷で適用される法律解釈に、矛盾や不一致が生じないようにするため、2019年7月4日から重要な法的争点を含む案件を大法廷に回付する、いわゆる「大法廷制度」が採用されています。最高行政裁判所は10月17日、ある案件を大法廷に回付することなく、諮問手続き(同裁判所のある小法廷が他の小法廷に対して意見を求める手続き)を利用することにより各小法廷の見解を統一しました。

深夜残業に労組の同意得ず

 高雄市政府の労働検査により、次の事件が発覚しました。

 ある小売企業の楠梓支店は、労働組合の同意を得ずに、支店の使用者代表が労働者代表との会議(以下「労使会議」)で労働者代表の同意を得ただけで、2名の女性職員を派遣して翌日の朝6時までの深夜早朝残業をさせました。労働局は、この深夜早朝残業が労働基準法(労基法)に違反するとして、この小売企業を4万台湾元(約14万4,000円)の過料に処し、企業名を公表しました。企業側はこの行政処分を不服として、処分の取り消しを求めましたが、最高行政裁判所は企業の敗訴を確定するとの決定を下しました。

 労基法の規定によれば、使用者が女性従業員を夜10時から翌日の朝6時まで労働させようとする場合、労働組合があるときはその同意を得る必要があり、ないときは労使会議で労働者代表の同意を得る必要があります。この小売企業本店には労働組合がありますが、楠梓支店には別途労働組合が設立されていませんでした。そのため、楠梓支店はこれまで本店の労働組合の同意を得ることなく、支店の労使会議で労働者代表の同意を得て、以上のような深夜早朝残業を女性従業員にさせていました。

諮問手続きで見解統一

 「企業の本店には労働組合があるが、支店に別途労働組合が設立されていない場合、支店の労使会議での労働者代表の同意を得さえすれば問題ないのか」という法的争点について、最高行政裁判所の第3小法廷は、「労働組合があるからには、法により労働組合が同意する必要がある」という二審(原審)の台北高等行政裁判所と同じ見解を採用しようと考えました。

 しかし、この見解は同じ法的争点に関する過去の最高行政裁判所の判決とは異なるため、大法廷に本事件の審理を回付する前に、諮問手続きにより、この見解に対する他の各小法廷の考えを諮問しました。

 他の各小法廷は、いずれも第3小法廷が採用した見解に同意したため、見解の統一が達成され、大法廷に回付する必要がなくなり、第3小法廷は直ちに判決を下しました。

 

 このように同法的争点は、「労働組合があるからには、法により労働組合で同意される必要があり、支店の労使会議において労働者代表が同意しただけでは不十分である」という見解に統一されました。これ自体は複雑な法的争点ではありませんが、諮問手続きにより最高行政裁判所の各小法廷の見解を統一した初めての事例になりました。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。