第309回 賃貸物の修繕と費用の負担

 マンションに備え付けのエアコンの故障やシャワーの水漏れなどがある場合に誰がその修繕義務を負い、費用を負担するのでしょうか。今回は、賃貸物の修繕と費用の負担について、民法の規定をご紹介します。

 まず、民法第429条第1項では、「契約または慣行により別段の定めがある場合を除き、賃貸人は賃貸物の修繕を全て行う」と規定され、原則として、賃貸人が賃貸物の修繕を行うこととされています。しかし、必ずしも賃貸人がすぐに対応してくれるわけではないので、賃借人が自ら修繕することを認める規定も存在します。

催告後に自ら修繕可能

 民法第430条の規定により、貸借契約期間中、賃貸物に賃貸人の費用負担となる修繕が必要な場合、賃借人は相当の期間を定め、修繕するよう賃貸人に催告することができます。そして、賃貸人がこの期間内に修繕をしない場合、賃借人は、以下の対応をとることが可能とされています。

  1. 契約を終了させる。
  2. 自ら修繕し、その費用の償還を賃貸人に請求する。
  3. 自ら修繕し、その費用を賃料から控除する。

 なお、日本でも一定の場合には賃借人も賃借物を修繕できるものと考えられていましたが、その要件を定めた明文はありませんでした。そこで、2020年4月より施行される改正民法では、▽1)修繕が必要である旨を通知したのに、相当の期間内に修繕しなかった場合▽2)急迫の事情がある場合──には、賃借人が自ら賃借物を修繕できることが明文化されます。

通知を怠ると賠償責任も

 上述の通り、賃貸人には、賃貸物を修繕する義務があります。しかし、賃借人は目的物を占有しており、その修繕の要否については賃借人の方が把握しやすい立場にあります。そこで、民法第437条では、賃貸借契約期間中、賃貸人の費用負担による賃貸物の修繕が必要な場合には、賃借人はその発生について賃貸人に直ちに通知しなければならないとされています。

 そして、賃借人がこの通知を遅延し、賃貸人がその遅延により適時に是正できなかった場合、賃借人はこれにより生ずる損害について、賃貸人に賠償する義務を負うことになります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。