第319回 物の担保責任

台湾法における「物の担保責任」とは、商品の売り主が、買い主への引き渡し時に当該商品の品質が約定に適合しないなどの瑕疵(かし)が存在しないことを担保する必要があることを指します。瑕疵が存在する場合、買い主は売り主に対し契約解除や代金の減額、損害賠償請求を主張できます。

主な法的根拠は以下の通りです。

民法第354条第1項:「物の売り主は買い主に対し、その物について第373条の規定に基づき危険が買い主に移転する時(商品の引き渡し時を指す)、価値が滅失・減少する瑕疵がなく、通常の効用や契約にあらかじめ定めた効用が滅失・減少する瑕疵もないことを担保しなければならない。」

同法第359条:「売買において、物に瑕疵があるために売り主が前5条の規定に基づき担保責任を負わなければならない場合、買い主は契約の解除か、代金の減額請求を行うことができる。ただし状況を鑑み、契約を解除することが明らかに公平性を欠く場合、買い主は代金の減額請求しかできない。」

同法第360条:「売買する物に売り主が保証した品質が欠けている場合、買い主は契約の解除や代金の減額請求をせず、不履行による損害賠償を請求することができる。売り主が物の瑕疵を故意に告知しない場合も同様とする。」

行使しなかった場合は消滅

実務上、物の担保責任は不動産取引でよく問題になります。例えば、甲が乙から家屋を購入して入居した後、当該家屋にひどい漏水があった、過去に殺人事件が発生したことが判明したなどの場合、甲は乙に対し、売買契約の解除や代金の減額を主張することができます。乙が甲に対し当該家屋に漏水がなく、殺人事件が発生したこともないと保証していた場合には、甲はさらに損害賠償を請求できます。

買い主が売り主に対し、同権利を永久に行使できるわけではありません。民法第365条によれば、買い主が商品に瑕疵があるために契約の解除や代金の減額請求ができる場合、その解除権や請求権は瑕疵があることを買い主が売り主に通知してから6カ月以内に行使しなかった、または商品の引き渡しから5年が経過した時に消滅します。

民法における物の担保責任は強行規定ではなく、当事者の特約により軽減したり、重くしたりできます。日本企業は売買契約を締結する前に、自社に最も有利な担保条件を設定するためにも、法律の専門家の意見を聞くべきです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。