第363回 日本法には明文のない台湾法上の「婚約」

2020年11月25日、婚約年齢の変更などを含む民法の一部改正案(以下、「台湾民法改正案」)が立法院の初審を通過しました。民法改正案第12条では、成人年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられています。

 婚姻年齢について、現行では男性は18歳、女性は16歳とされていますが、民法改正案第980条では、男女一律に18歳とされています。日本においても、18年に可決された民法の大改正により、22年4月1日からは、成人年齢が18歳に引き下げられ、婚姻年齢も男女一律で18歳となる予定ですので、台湾民法改正案が最終可決されれば、これらの点について、日本法と同様の規定になります。

 成人年齢、婚姻年齢の変更のほか、台湾民法改正案第973条において、現行では男性17歳、女性15歳とされている婚約年齢が男女一律に17歳とされています。日本法上、婚約についての裁判例は存在するものの、民法等の法律の明文は全く存在しません。しかし、台湾法では、婚約年齢をはじめとして婚約に関するさまざまな規定が存在します。具体的には以下のとおりです。

婚約解除で賠償請求も

 婚約は代理によることができず、男女の当事者が自ら合意する必要があります(民法第972条)。婚約が成立した場合であっても、相手方に次の事由がある場合には、婚約を解除することができます(同法第976条第1項)。

1.婚約後、他の人と別途婚約または結婚した場合

2.結婚日として指定された日を故意に遵守しなかった場合

3.1年以上にわたり、生死が不明である場合

4.重大な不治の病気にかかった場合

5.婚約後、他の人と合意の下、性交した場合

6.婚約後、服役を宣告された場合

7.その他重要な事由が存在する場合

 上記規定に基づき、婚約が解除された場合、無過失の当事者は、他方の過失当事者に対して、金銭的損失がなくとも、相当の金銭的賠償を請求することができます(同法第977条第1~2項)。

 反対に、上記1~7の事由がないにも関わらず、婚約を破棄した場合、他方当事者がこれにより受けた損害について賠償責任を負います(同法第978条)。

 さらに、婚約が無効、解除または取消された場合、一方当事者は他方当事者に対し、婚約に際して行われた贈与物の返還を請求することができます(同法第979条の1)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。