第380回 民事訴訟の口頭弁論期日に出頭しなくてもよいか

 適法な通知が行われたにもかかわらず、民事訴訟の口頭弁論期日に当事者の一方が正当な理由なく出頭しなかった場合、裁判所は、出頭した当事者の申し立てにより、当該出頭した当事者による弁論を経て判決を下すことができます。

 この場合において、出頭しなかった当事者が準備書面も提出していないときは、原則として、出頭した当事者が主張する事実を自認したものと見なされます。当事者が、適法な通知が行われたにもかかわらず正当な理由なく2回連続で口頭弁論期日に出頭しなかった場合も、裁判所は職権により、一方当事者による弁論を経て判決を下すことができます。

簡易手続および小額手続き

 上記は、通常の訴訟手続に適用されます。簡易手続き(例えば、訴額が50万台湾元=約196万円以下の場合等)、小額手続き(例えば、訴額が10万元以下の場合等)については、当事者が1回でも口頭弁論期日に出頭しなかった場合、裁判所は職権により、一方当事者による弁論を経て判決を下すことができます。

 小額手続きについては、上記の規定のほか、小額手続きを適用する事件ではまず強制調停を行わなければならず、当事者の一方が、強制調停期日の5日前までに適法な通知が行われたにもかかわらず、正当な理由なく調停期日に出頭しなかった場合、裁判所は、出頭した当事者の申し立てにより、訴訟の弁論を直ちに開始することができ、また、職権により、当該出頭した当事者による弁論を経て判決を下すことができます。言い換えれば、小額手続きの第1回の調停に出頭しない当事者がいた場合、当該手続きは、終了し判決書の受領となる可能性があります。

出頭しない=敗訴ではない

 なお、海外では「欠席判決」というものがありますが、これは、当事者の一方が口頭弁論期日に欠席したために、欠席した当事者が請求を放棄または認諾したと擬制し、裁判所が当該欠席した当事者敗訴の判決を直接に下すことを指します。

 しかし、台湾ではこのような制度を採用しておらず、台湾の裁判所は一方当事者による弁論を経て判決を下しはしますが、やはり、口頭弁論調書、証拠調べの結果などを含む全ての訴訟資料を詳しく調べ斟酌(しんしゃく)しなければなりませんので、出頭しなかった当事者が必ずしも敗訴するわけではありません。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。