第420回 オンラインカジノ利用の違法性

 台湾では日本と同様に、原則として、賭博行為が禁止されています。もっとも、日本では、賭博行為を行った場所に関係なく賭博罪が成立するのに対し、台湾では、賭博罪は「公共の場所または公衆が出入りできる場所」で賭博行為を行った場合に成立します(刑法第266条第1項)。そして、「公共の場所または公衆が出入りできる場所」以外での賭博行為には賭博罪が成立せず、社会秩序維持法第84条に基づき9,000台湾元(約3万8,000円)以下の過料に処されるにすぎません。

 このように、賭博行為について刑法上の賭博罪が成立するか、社会秩序維護法により処罰されるかは、当該賭博行為が行われた場所が「公共の場所または公衆が出入りできる場所」に該当するか否かにより判断されます。しかし、オンラインカジノがいずれに該当するかは必ずしも明確ではありませんでした。この点に関して、2018年12月20日、最高裁判所は、以下のような判断を下しました(107年度台非字第174号判決)。

以前は閉鎖的なら不成立

 「インターネット上での賭博につき、非公開で特定のパスワード番号が設定され、オンラインで当該ウェブサイトに接続し、その賭博活動および内容が一定の閉鎖性を備え、賭博に参加した人とのみ連絡し、その他の民衆はそれら賭博のことを知る由がない場合、その他の人にとっては、閉鎖的で隠密な空間と同じであり、通常の場合において、このような方法により交換されるメッセージはプライバシー性を備えているため、上述のような方法を利用してお金を賭けた場合、当該内容または活動が他人に知られることはないため、なお公開性を備えず、『公共の場所』または『公衆が出入りできる場所』で賭博したとは認め難い。」

 当該判決では、上記理由により、賭博罪の成立を否定し、さらに、刑事政策上このような行為を刑法により処罰したいのであれば、罪刑法定主義に符合するよう、法律を修正して明記すべきであると判断されました。そして、当該判決は他の裁判の判決において260回以上引用され、オンラインカジノの利用行為について、多くの無罪判決が下されました。

法改正でオンラインも対象に

 しかし、22年1月12日に刑法が改正され、電信設備、電子通信、インターネットまたはその他類似の方法により財物を賭けた場合にも賭博罪が成立する旨が明記されました(刑法第266条第2項)。当該規定の新設により、今後、オンラインカジノを利用した場合には賭博罪として処罰が科されます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。