第428回 電動キックボードに関する法規制




 東京では、電動キックボードシェアサービス「LUUP(ループ)」などを利用して通勤する人をよく見掛けます。台北市でも電動キックボードを利用して移動する人がだんだん増えてきました。

 日本では、今年4月19日に道路交通法の改正案が可決され、電動キックボードをはじめとする小型電動モビリティーが「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」と位置付けられました。運転免許は不要で、ヘルメットの着用は努力義務とされ、年齢制限は16歳以上とされました。

 台湾でも、同じ日に、「道路交通管理処罰条例(以下「本条例」)が修正され、「小型電動二輪車」の規制が以下の通り明確に定められました。

「電動自転車」の定義変更

 「電動自転車」を改め「小型電動二輪車」とされました。検査に合格し、ナンバープレートを取り付けることが必要です。運転免許は不要で、14歳以上で運転することができると定められました。

自賠責保険が必要

 小型電動二輪車の所有者は自賠責保険を付保しなければなりません。付保していない場合、ナンバープレートの登録、変更または交付が受理されません。規定に従いナンバープレートを取得していないなどの行為は、1200~3600台湾元(約5300~1万6000円)以下の過料に処することができるとされ、走行が禁じられます。

飲酒運転は違反

 今回の法改正を経て、電動キックボードも「慢車(自転車など、主に人力や、電気、動物を動力とする最高時速25キロメートル以下の車両)」の規定に組み入れられ、「個人用の移動機器」として規定されました。走行レーンや時間、速度制限については地方政府により定められます。また、法律に明確な定義が盛り込まれたため、飲酒後に電動キックボードを運転した場合には、刑法第185の3条の安全運転不能罪を構成する可能性があり、再犯時には氏名と写真の公表も可能とされます。これにより人を死亡させたときは、3年以上10年以下の有期懲役に処せられ、200万元以下の罰金を併科される可能性があります。

 最後に、日本でヘルメット着用が努力義務とされたことと異なり、本条例第73条第4項では「小型電動二輪車の運転者が規定に従いヘルメットを着用しない場合、運転者を300元の過料に処する」と規定していることに注意する必要があります。

 新法は既に可決されましたが、施行日がまだ定められておらず、現在の「道路交通安全規則」第83の3条では「自動車および動力機械の範囲に属しない動力車、スポーツ・レジャー用の動力器材またはその他これらに類する動力器具は、道路で走行したり使用したりすることができない」と規定しているため、現在、電動キックボードの道路での走行は、実際には法令の規定に違反していることになります。本条例第32の1条の規定によれば、道路で運転した場合、1200~3600元の過料に処される可能性があります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。