第444回 台湾の夫婦別姓

日本の民法第750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、『夫又は妻の氏』を称する。」と規定されています。また、日本の戸籍法第74条では、婚姻をしようとする者は「夫婦が称する氏」を届書に記載して届け出なければならないと規定されています。このように、日本では、法律上、夫婦は同姓でなければならないとされています。

また、東京都内の事実婚状態にある夫婦3組が婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」の欄にある「夫の氏」、「妻の氏」の両方にチェックを入れて届け出たところ、いずれも不受理扱いとされたため、これを受理するよう命じる審判を求めた事案(最高裁判所大法廷決定令和3年6月23日)や、事実婚状態にある夫婦が、民法・戸籍法の規定は婚姻の自由を侵害しており違憲であると主張して、国に賠償を求めた事案(最高裁判所第三小法廷決定令和4年3月22日)などでは、いずれも夫婦別姓は合憲であると判断されています。

配偶者の姓を冠することも可

これに対し、台湾の民法第1000条第1項では、「夫婦は、各自の本姓を保持する。但し、本姓に配偶者の姓を冠することを書面で約定し、戸政機関で登記することができる。」旨が規定されており、台湾では夫婦別姓が原則とされています。また、戸政機関で登記することにより、配偶者の姓を冠する(例えば、葉○○さんが頼〇〇さんと婚姻関係にある場合、葉頼〇〇とする)ことも可能であるとされています。そして、行政院法務部の解釈(法律決字第10203509470号)によれば、当該約定は必ずしも結婚時にする必要はなく、結婚後にすることも可能です。

台湾の民法第1000条第2項によれば、配偶者の姓を冠する場合でも、随時、その本姓を回復することができますが、これは同一の婚姻関係存続中において一回に限られます。行政院法務部の解釈(法律決字第0980028203号)によれば、配偶者の姓を冠している場合、当該配偶者が死亡しても、冠姓を保持することは可能ですが、再婚する場合、死亡した前の配偶者の冠姓を保持することはできません。

なお、前述の行政院法務部の解釈(法律決字第10203509470号)によれば、民法第1000条の規定は、配偶者の姓を冠することを認めたにすぎず、日本のように、妻が本姓を取り払い、夫の姓に変更することはできないようです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。