第463回 隣人の騒音への対処法

最近、豪邸に住む台湾のある有名な女性スターが階下の隣人から、「子ども3人が早朝や深夜に駆け回り、騒音を立てるのを放任したため、ノイローゼで受診することになってしまった」と訴えられました。女性スターは、この隣人が音に対してあまりにも敏感だと反撃し、自分や家族に対する嫌がらせをやめるよう隣人に要求しました。

多くの人が隣人の騒音による妨害や、うるさい隣人からの嫌がらせを経験したことがあるため、「隣人が騒音を立てた場合、どのように処理すべきか」ということが、最近、台湾中で熱い議論が交わされる話題となっています。

騒音計で証拠集め

台湾法上、騒音を立てるのをやめるよう隣人に要求する主な法的根拠となり得るものとして、次が挙げられます。

一、公寓大廈管理条例(マンション管理条例)第16条:「住民は、勝手にごみを捨てること、各種汚染物、悪臭物質を排出すること、または喧噪、振動を発生させること、およびその他これらに類する行為をしてはならない」。

住民がこれに違反した場合、同条第5項により、コミュニティーの管理人または管理委員会は制止しまたは規約に従って処理しなければならず、制止されても従わない者については、直轄市、県(市)の主管機関に報告して処理させることができます。

このほか、主管機関は同条例第47条第2項の規定に基づき、騒音を立てた者を3000台湾元(約1万3000円)以上、1万5000元以下の過料に処することができ、また、期限を定めて改善または義務、職務の履行をこの者に命じることができ、期限になっても改善しないまたは履行しない者については、連続して処罰することができます。

二、民法第793条:「土地の所有者は、他人の土地、建築物またはその他の工作物から、ガス、蒸気、臭気、煙、湯気、灰、喧噪、振動およびその他これらに類するものが侵入している場合、これを禁止することができる。ただし、その侵入が軽微であるとき、または土地の形状、地方の慣習から相当と認められるときは、この限りでない」。

どれぐらい大きな騒音が制止しなければならない騒音に該当するのかについては、騒音規制法によらなければならず、騒音を発する場所が住宅、病院または工場などであるか、騒音を発する時間が日中であるか夜間であるかによって、異なる基準があります。

一般的に、住宅エリア内の場合、午後10時以降に70デシベル以上の音を発した場合、人の心身にとって有害で、制止しなければならない騒音に該当します。

もっとも、法的手段で隣人による騒音を阻止しようとする場合には、まず、デシベルメーターなどの道具で騒音の具体的な証拠を収集する必要があります。そうしない場合、訴訟において証明不十分で敗訴の判決を下される可能性が高いです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。