第494回 有限公司から股份有限公司への組織変更

会社の組織が異なれば、ガバナンス方法も異なります。

台湾で最もよくある「有限公司」と「股份有限公司」に関して言えば、両者の最大の違いは、有限公司は人的結合体に近く、株主の人数や出資額により決議が行われますが、股份有限公司は資本的結合体に近く、株式の多寡により決議が行われるという点にあります。

有限公司と比較すると、股份有限公司では株主の出資額を株式に転換し、また、株式は原則として、他の株主の同意を得る必要なしに自由に譲渡することができます。

「有限公司はほぼ日本の合同会社に相当し、股份有限公司はほぼ日本の株式会社に相当する」という説明も間違いではありませんが、日台間の会社法上の規定には細かい違いが存在しますので、本コラムでは訳さずに原文のままの表記と致します。

有限公司の仕組みは単純であるため、多くの起業家が最初は有限公司の形で会社を設立しますが、事業の規模拡大に伴い、外部から資金を募る必要がある場合、組織形態を股份有限公司に変更したほうがより外部の投資家を引きつけることができ、将来的に公開発行することもできます。

またそれ以外に、股份有限公司では、優先株式の発行、従業員のストックオプションなど、多岐にわたる持分計画を実施することもできます。

組織変更の手続き

有限公司から股份有限公司に変更する条件について、以下のとおり簡単に説明します。

股份有限公司の設立は、2人以上の自然人株主または政府、法人株主1人により組織される必要があります。

有限公司の株主が1人の自然人のみの場合には、出資者をもう1人探し、会社の株主の人数を2人にする必要があります。

その後、株主の議決権の過半数が同意した株主同意書を取得し、株主総会において定款の変更が承認され、董事および監察人が選任され、董事会決議により董事長が選任された後、会社所在地の主管機関において変更登記を申請しなければなりません。

組織変更後の留意点

股份有限公司への変更後においては、次の点をさらに留意する必要があります。

1. 組織変更に関して、債権者に通知および公告すること、また、変更後の会社が変更前の会社の債務を引き受けなければならないこと。

2. 有限公司から股份有限公司への変更後においては、股份有限公司から有限公司への変更ができなくなること。

3. 法的義務ではないですが、組織変更に関して、契約先に通知し、契約の修正が必要か否かの確認をお勧めします。

組織変更を行う際によくある問題として、さらに、「閉鎖型股份有限公司を選択すべきかどうか」、「額面株式を発行するか、無額面株式を発行するか」、「自然人の株主は法人として株式を保有するかどうか」などがあります。

ニーズを現地の法律・会計の専門家に伝えて、最も適切なアドバイスを得るようにすることをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。