第497回 株式持ち合いと株式交換の違い

株式持ち合いとは

株式持ち合いとは、会社法第156条の3に規定する「会社設立後、取締役会において三分の二以上の取締役が出席した上で、出席取締役の過半数の決議をもって、他社の株式の譲受対価として新株を発行する」手続きであり、会社が「新株の発行」によって別の会社の株式の譲受対価とすることをいいます。

経営の観点からすると、株式持ち合いの目的は、戦略的提携によって市場における地位を固めるか、または双方の利益を増やすことに重点を置いており、会社間で株式の相互保有の関係が形成されます。株の持ち合いは部分的な株式持ち合いに過ぎず、持ち合い後も二社は独立した個体のままです。

株式交換とは

株式交換とは、企業M&A法第4条第5号に規定する「会社が発行済み株式の全部を他社に譲渡し、他社がその対価として株式、現金またはその他の財産で会社の株主に給付を行う行為」を指します。

株式交換後、二社間は親会社と子会社の関係となり、二社間には支配従属関係が存在します。

株式交換は企業のM&A(合併・買収)の一つの手法であり、サプライチェーン資源の統合、営業規模の拡大、経営の業績向上などに利用することができます。

株式持ち合いと株式交換の差異

「株式持ち合い」と「株式交換」の両者の違いは、株式持ち合いは、会社の100%の株式を他社との株式持ち合いに用いることではなく、「新株の発行」によって他社への譲受対価とすることであり、それに対し株式交換は、別の会社に自社の「100%の株式を全部譲渡する」ことであるという点です。

また、台湾経済部の2018年12月19日付経商字第10702426510号解釈によりますと、株式持ち合いには、他社の発行済み株式の100%を譲り受けるケースは含まれません。

ただし、C社とB社間で株式持ち合いの規定に従い、C社が対価として新株をB社の株主(A社)に発行し、C社がB社の一部の株を取得した後、C社が別途現金でA社からB社の残りの株式を買い受けることでC社が保有するB社の株式が100%に達する場合については、認められています。もっとも、これは企業M&A法に規定する株式交換の手続で処理されないと、同法のほかの規定(例えば、第3章の税金優遇措置)は適用されません。

さらに、「株式交換」においては、B社とC社の取締役会が株式交換契約をまとめ、それぞれ株主総会に提出し特別決議を行い、B社が発行済み株式の全部をC社に譲渡し、C社が自社の株式をもってB社の株主(すなわちA社)に対価を支払うことを承認することになります。

よって、株式交換に関する取引行為はB社とC社間で行われるものであって、A社とC社間の取引ではないと解釈されています。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。