第498回 消費者保護法の懲罰的損害賠償

加害者への制裁および同様の行為の抑止等を目的とし、実際に生じた損害以上の賠償責任を負わせる「懲罰的損害賠償」は、日本では認められておりませんが、台湾では、いくつかの法律において明文の規定があります。

今回は、台湾の消費者保護法における懲罰的損害賠償について紹介させていただきます。

最大3倍の懲罰的賠償金

消費者保護法第51条では、「本法に基づき提起した訴訟は、企業経営者の故意によりもたらされた損害の場合、消費者は損害額の5倍以下の懲罰的賠償金を請求することができる。但し、重大な損害が過失によりもたらされた損害の場合、3倍以下の懲罰的賠償金を請求することができ、過失によりもたらされた損害の場合、損害額の1倍以下の懲罰的賠償金を請求することができる。」旨が規定されています。

従来、懲罰的損害賠償の上限を計算する際の「損害額」に、財産上の損害だけでなく非財産的損害(精神的損害等)も含まれるかどうかについて学説が分かれていましたが、最高法院民事大法廷は、2021年2月26日、上記「損害額」には非財産的損害も含まれるとの見解を示しました。

このため、企業経営者が消費者保護法に基づき損害賠償を請求された場合、その賠償額は高額になる可能性があります。

企業の損害賠償責任

企業経営者が消費者保護法に基づく損害賠償責任を負う場合として、以下の義務に違反し、消費者または第三者に損害をもたらした場合があります(第7条)。

1.商品の設計、製造等に従事する企業経営者は、提供する商品を市場に投入する場合、当該商品について、当該時点の科学技術または専門水準に見合う、合理的に期待できる安全性を確保しなければならない。

2.商品が消費者の生命、身体、健康、財産に危害を及ぼす可能性がある場合、目立つところに、警告の表示および危険の緊急処理方法を表示しなければならない。

なお、消費者保護法第9条により、商品の輸入者も上記損害賠償責任を負うため、商品の製造等を行っていない場合でも注意が必要です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。