第501回 選挙権の制限

台湾では、2024年1月13日に、4年に一度の総統選挙が実施される予定です。今回は、選挙権が制限される場合について紹介させていただきます。

受刑者の投票

中華民国憲法第17条では、中華民国の国民には選挙権があると規定されており、また、同法第130条では、中華民国国民は満20歳で選挙権を有する旨が規定されています。

しかし、現在の選挙制度では、受刑者は選挙で投票することができません。

この投票制限に関し、受刑者が、刑務所に投票所を設置するよう求めていた行政訴訟において、2023年11月16日、最高行政法院は、刑務所に投票所を設置すべきとした台北高等行政法院の判断を覆し、刑務所での投票所の設置は不要であると判断しました。

主な理由は、以下のとおりです。

1.選挙権の行使は、投票行為のほか、選挙権者が公開、公平、公正な手続きで自由意志に基づき選挙権を行使することを保障するため、民意の共通認識である投票および開票制度が必要である。

2.公職人員選挙罷免法第57条は公共の場所への投票所の設置を規定している。投票所は、不特定多数者が見ることができる開票所とし、現場において公開で開票作業を行うため、矯正機関のような閉鎖的な場所への投票所設置を請求することはできない。これを認めることにより生じ得る重大な損害は、請求が認められないことによる個人的損害をはるかに上回る。

日本でも、2023年7月20日に、東京地裁が、受刑者の投票を認めない公職選挙法の規定は合憲であると判断しました。

在外選挙制度

日本では、1998年に在外選挙(比例代表選出議員選挙のみ)を導入し、海外に居住している場合であっても国政選挙での投票が可能となりました。

その後、最高裁大法廷判決や法改正を経て、衆・参選挙区選出議員の選挙も在外選挙の対象とされ、さらに、国民投票や国民審査についても在外選挙の対象とされました。

しかし、台湾では、在外選挙の制度は導入されておらず、投票するためには台湾に戻らなければなりません。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。