第514回 無期懲役で仮釈放後に再犯、一律25年収監は違憲

憲法法廷は2024年3月15日、24年憲判字第2号判決を下し、刑法における「無期懲役で仮釈放となった後、罪を犯したため仮釈放が取り消された場合、一律に収監され引き続き25年間執行する」との規定は違憲であると宣告しました。

窃盗罪で再収監

本件の概要は次のとおりです。

謝という男が89年に強盜罪、強姦罪により最高法院(最高裁判所)に無期懲役を言い渡され、判決が確定しました。

謝は刑務所で18年間刑に服した後、仮釈放となり出所しましたが、仮釈放の期間中に窃盗罪を犯し、1年2月の有期懲役の判決が下されました。

このため、謝のもともとの仮釈放は取り消され、25年間、収監されることとなりました。

謝は、自身が再度犯した罪は軽微な窃盗罪であり、現行の刑法第79条の1第5項(無期懲役で仮釈放が取り消され、残刑期間の執行がなされる場合には、無期懲役について引き続き25年間執行するものとする)における、仮釈放取消の理由および情状の軽重を区別することなく一律に引き続き25年間執行するとの強行規定は、公平・正義および比例の原則に違反しているとして、憲法法廷に憲法解釈を申し立てました。

2年以内に法改正へ

憲法法廷は審理後、謝の主張を認め、仮釈放取消の理由および再犯の情状の軽重を区別することなく一律に25年執行するとした刑法第79条の1第5項の規定は比例の原則に合っておらず、人身の自由を保障するという憲法の趣旨にも反していると判断し、かかる規定は違憲であると認定して、遅くとも2年後には失効させるべきとしました。

法務部は、憲法法廷の判決の結果を尊重し、2年以内に刑法第79条の1第5項の法改正を完了させることを正式に発表しました。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。