第517回 未成年者の性的画像を所持した場合の法的責任

最近、台湾の著名タレントの黄子佼が児童および少年の性的画像(18歳未満の未成年者の性交またはわいせつ行為を内容とする動画)を所持していたことにより、台湾各界の人々から糾弾を受けました。

1年以下の懲役

本件の概要は、タレントの黄子佼が2013年2、3月に、台北市某所で、新人の写真を撮影する機会を利用して、当該女性に対し、強制性交、強制わいせつ行為をしたとして告発されたというものです。

台北地方検察署の検察官による捜査の結果、当該女性は本件の重要な事実関係に関して「覚えていない、記憶にない」と述べ、また、事件発生後も通報や受診の記録が一切なく、黄氏が強制性交、わいせつ行為をしたことを証明する具体的な証拠はありませんでした。

このほか、検察官が黄宅から押収したパソコン、ハードディスク、メモリカードを精査しても、黄氏が当該女性に対して強制性交またはわいせつ行為をしたことを示す写真や動画は見つからなかったため、2024年4月初旬、黄氏が強制性交罪および強制わいせつ罪で告発された部分に関しては不起訴処分となりました。

他方で、検察官によって黄氏のハードディスクから児童および少年の性的画像ファイル7個が発見されたことから、検察官は、黄氏が児童および少年の性的搾取防止条例第36条第1項の「児童・少年の性的画像所持罪」(正当な理由もなく児童または少年の性的画像を所持した場合、1年以下の有期懲役、拘留に処し、または3万台湾元(約14万円)以上30万元以下の罰金を科すもしくは併科する)を犯したと判断し、黄氏を2年の起訴猶予処分とし、また、120万元を国庫に納付することおよび始末書を1通作成することを黄氏に要求しました。

社会の反応

上記の起訴猶予処分が公表された後、台湾社会では、「黄氏は高い知名度を有する著名タレントだというのに、このような未成年者のポルノ画像を購入するとは、容認できない」、「現行法の罰則は軽すぎ、未成年のポルノ画像を撮影、製作、取引する不法行為を有効に抑止することはできない」など、幅広い議論や論評が行われました。

メディアの報道によりますと、台湾の立法院は関連の法改正作業にすでに着手しているとのことです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。