第15回 立法院が会社法第197条改正案を可決、「株式非公開発行」会社の取締役の株式譲渡は制限されなくなる

2012年12月25日、立法院は会社法第197条改正案を可決した。これにより、今後は、取締役(中国語:董事)が任期満了前に改選される場合(例えば、A社の取締役である甲、乙、丙の任期は10年1月1日から12年12月31日までだが、12年12月1日に、前もって新しい取締役の丁、戊、己を選任することが可能。その場合、丁、戊、己の選任日は12年12月1日であるが、就任日は13年1月1日となる)、株式公開発行会社の取締役が選任当時に保有する会社の株式数の2分の1を超える株式を就任前に譲渡した場合、または株主総会開催前の株式名義書換停止期間中において、選任当時に保有している株式の2分の1を超える持ち株を譲渡した場合にのみ取締役の資格を喪失する。他方、株式非公開発行会社の取締役の持ち分を譲渡する場合、前述の制限は受けない。

第1項と第3項の不合理

会社法第197条第1項には「取締役は選任された後、主管機関に対して選任当時に保有する会社の株式数を申告しなければならない。株式公開発行会社の取締役が選任当時に保有する会社の株式数の2分の1を超える株式を任期中に譲渡した場合、その取締役は当然に解任される」と規定されている。

しかし、旧会社法の同条第3項には「取締役が任期満了前に改選される場合、選任された取締役が、選任当時に保有する会社の株式数の2分の1を超える株式を就任前に譲渡した場合、または株主総会開催前の株式名義書換停止期間中において2分の1を超える持ち株を譲渡した場合、その選任は効力を失う」と規定されていた。しかし、当該条項の文義上では、株式公開発行会社の取締役に限定していなかったため、「会社法第197条第1項における取締役の株式譲渡に関する制限は株式公開発行会社にのみ適用されるが、同条第3項の規定は株式公開発行会社にも株式非公開発行会社にも適用される」という不合理な現象が生じていた。

制限対象を限定

立法委員は、「会社法第197条における取締役の持株譲渡制限の立法目的は株式公開発行会社についてのみ制限することである。また、実務において、株式非公開発行会社の多くはファミリー企業であり、会社の株式を上場させようという考えはないが、これらの会社の取締役が資金調達の必要がある場合において、一部の持ち株を友人や親せきに譲渡しようとしても会社法第197条第3項の制限があるため譲渡することができなかった。

この問題を解決するため、第197条第3項を『株式公開発行会社の取締役は選任された後、選任当時に保有する会社の株式数の2分の1を超える株式を就任前に譲渡した場合、または株主総会開催前の株式名義書換停止期間中において2分の1を超える持ち株を譲渡した場合、その選任は効力を失う』と改正し、制限対象を株式公開発行会社に限定することを明文で規定する」と説明している。


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執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。