第100回 育児休業と皆勤賞与

労働部(日本の厚生労働省に当たる)は2015年5月27日、労使双方が約定する賃金項目に皆勤賞与が含まれる場合、無給の育児休業期間について、皆勤賞与を給付する必要はないが、無給の育児休業期間の前後に、1か月に満たない出勤期間がある場合には、使用者は、労働者が出勤した期間の比率に応じて皆勤賞与を給付しなければならない旨を示した。

「男女雇用平等法(中国語:性別工作平等法)」(以下、「男女平等法」という)第16条の規定によれば、労働者は連続して6か月以上勤務した場合、3歳に満たない子女1人につき、最長2年間、無給の育児休業を申請することができる。また、男女平等法第21条によれば、労働者が無給の育児休業を請求する場合、「使用者は、欠勤とみなしてその皆勤賞与、考課を左右し、又はその他不利な処分を行ってはならない」と定められている。

無給の育児休業により、労働契約の履行は一時的な中断の状態になるため、労働者は法により当該期間における出勤義務を免除され、他方、使用者も賃金を給付する必要はない。しかし、実務上、労働者が無給の育児休業を申請する場合、休業の開始月・終了月に必ずしも丸1か月欠勤するとは限らない。そこで、休業の開始月・終了月に、丸1か月欠勤していない場合には、当然、当該期間は賃金・賞与が支払われるべきであることから、労働部は、使用者に対し、労働者が出勤した期間の比率に応じて、皆勤賞与も給付することを求め、上記通知を発した。

上記通知に従えば、労働者が6月16日から無給の育児休業を申請した場合、6月1日から15日までの間、皆勤規定に違反していなければ、16日から無給の育児休業に入ったとしても、使用者は6月1日から15日までの間の皆勤賞与について、1か月を30日として計算し、30分の15を支給しなければならないことになる。

使用者が上記通知に違反した場合、男女平等法第21条に違反したとして、同法第38条に基づき、使用者には2万台湾元以上30万台湾元以下の過料が課される可能性があると解する。

なお、就業保険法第192条によれば、労働者が無給の育児休業を申請する場合、労働者保険局から、就業保険の育児休業手当として、付保にかかる賃金の6割を最長で6か月間、受給することができる。


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執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。