第165回 食品業者の自主管理責任の強化

食品安全衛生管理法(以下「食安法」)第7条第1項の規定により、食品業者は食品の衛生安全の確保のため、食品安全モニタリング計画を策定しなければならない。具体的には、食品業者はリスク評価と危害分析重要管理点の精神に従い、各産業の特徴に基づき、原料調達、製造、保管、販売等を重要管理点とし、食品安全モニタリング計画として策定することが要求されている。

また、食安法第7条第2項の規定により、食品業者は強制的検査を実施しなければならない。ここでは、業者による自主管理を徹底するため、法規により食品業者に必要な検査の実施を義務付け、自社製品の原材料、半製品または完成品の衛生安全を確認するよう要求している。

食品業者の自主管理責任を強化するため、衛生福利部は2016年9月19日に、上記規定に関する「食品安全モニタリング計画の策定と検査を行うべき食品業者、最短検査周期およびその他関連事項」を改正することを通知した。

当該改正により、▽植物農産製品▽麺類、春雨類食品▽食酢▽卵製品▽粉製品──の5種類の製造・加工・調合業者(工場登記済みかつ資本金が3,000万台湾元以上)、ならびに▽植物農産製品▽肉類加工食品▽乳製品加工食品▽水産物食品▽乳幼児用食品──の5種類の輸入業者(商業登記、会社登記または工場登記済み)に対し、規定されたスケジュールに従って食品安全モニタリング計画の策定、および強制的検査の実施を要求することが追加された。

この結果、23業種が食品安全モニタリング計画の策定と強制的検査を要求されることになる。なお、今回新しく対象とされた業種には約4,700社強が含まれ、合計1万9,000社強が対象となる。

対象となる業種・規模に該当する食品業者が期限を過ぎても規定通りに食品安全モニタリング計画の策定または強制的検査の実施をしていない場合には、当局は食安法第48条により一定期間内に是正するよう命じることができる。

また、一定期間を過ぎても是正しない場合には、当局は3万元から300万元までの過料を科することができる。さらに、違反の結果が重大であった場合には、当局は▽営業禁止▽一定期間の営業停止▽当該会社、商業、工場の登記事項の全部もしくは一部、または食品業者の登録の廃止──も命じることができる。登録の廃止を命じられた場合、1年間は再登録を申請することができない。

新たに対象となる業者は上記への対応が必要なことに注意する必要がある。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。