第224回 賃貸住宅市場の発展および管理条例

立法院は2017年11月28日、「賃貸住宅市場の発展および管理条例」(以下「本条例」)を可決した。同年12月27日に総統府が公布し、公布から6カ月後に施行される予定だ。本条例は台湾の賃貸住宅市場の健全化を目的とし、主に管理受託型業者およびサブリース型業者(以下「業者」と総称)を規範化するものであり、その内容には敷金の上限と返金、賃貸人の修繕義務、転貸関係、遺留物の処理および中途解約の事由などが含まれている。

例えば、第7条には「敷金は2カ月分の賃料総額を超えてはならない」ことや「賃貸人による、賃借人の債務充当後の敷金返金義務」が規定されており、第9条には「転貸(いわゆるまた貸し)は賃貸人の書面による同意を必要とし、かつ転貸者が転貸契約を締結する際は、二次賃借人に対し前項の転貸同意文書等を提供しなければならない」と規定されている。注意すべきなのは、第10条第1項第4号に「賃貸期間中、賃貸人は再建のため部屋を回収する必要がある場合、賃貸契約を中途解約することができ、かつ賃借人はいかなる賠償も請求してはならない」と規定されていることである。この点は賃借人にとって不利である。

日本との違い

そもそも、本条例の主な目的は台湾の賃貸住宅市場の専門化の促進にあるため、賃借人の権益の保障はただの付帯効果である。台湾で不動産を賃借する日本人は上記の第10条第1項第4号のほか、以下の日台間の差異に注意する必要がある。

日本の借地借家法第26条および第28条において、建物賃貸借契約の更新は当事者が賃貸借期間の満了の1年前から6カ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知等をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなし、賃貸人に正当な事由がなければ、当該通知をすることができない、と規定されている。また、同法第32条の規定に基づき、賃貸人が賃料を引き上げたいが、賃借人が同意しない場合、双方は当該条文に基づき具体的な賃料について裁判所に調停を申し立て訴訟を提起することができる。日本の制度下では、賃貸人が契約更新時に更新拒否を交渉条件として賃料の引き上げを行おうとする場合、正当な理由が必要であり、正当な理由がないときは、更新を拒否してはならない。

日本のような制度が本条例の立法に伴って台湾に導入されるわけではなく、賃貸人は現在でも更新拒否を交渉条件として賃料の引き上げを行っており、賃借人にとって不利な状況である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。