第254回 合弁の柔軟性高めた改正会社法

立法院が今年7月6日に可決した改正会社法で、変更された条文は148条に上ります。その中で重要な変革の一つは、ベンチャー企業の設立奨励です。

従来の会社法は、「一株一票」の株主平等主義、および株式譲渡自由の原則の下、株式会社に対し定款によって会社株式の譲渡を制限してはならないと規定しており、合弁合意書に取締役・監査役の選任に関する取り決め、特定の議案に対する否決権、株式の譲渡制限などの条項を盛り込んでいても、その執行が難しくなる恐れがありました。

改正会社法は、会社が定款によって株式の譲渡を制限すること、株主の間で書面契約によって株主の議決権の共同行使を約定すること、および株主による議決権信託を認めたほか、定款に次の複数の種類の優先株式を設定することも解禁しました。

  1. 複数議決権優先株式(ただし、監査役選出の際は、普通株式の株主の議決権と同じ)または特定事項に対して否決権を有する優先株式
  2. 株主の取締役、監査役への選出を禁止または制限、または一定の定員の董事に当選する権利を付した優先株式
  3. 複数の普通株式に転換できる優先株式
  4. 譲渡が制限される優先株式

ベンチャー設立が容易に

従来はあらゆる企業に同一制度が適用されていましたが、現在は企業の規模、産業の性格、合弁パートナーとの関係などに応じて会社の在り方を自ら取り決められるようになりました。これによりベンチャー企業の設立が容易になったと同時に、外資企業が台湾の提携パートナーと合弁会社を設立する際の柔軟性も高まりました。

しかし、上記規定は属人性の高い有限会社や、株式の流通性の高い公開発行会社には適用されない点に注意する必要があります。このため、上記規定の適用を望むのであれば、株式会社を設立し、かつ非公開発行を維持しなければなりません。

施行日は11月1日見込み

なお、経済部は今回の改正会社法の施行日を11月1日に設定し、近く行政院の同意を得る見通しです。今後、台湾に拠点を設立する必要がある場合は、まず現地の弁護士に相談することをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。