第255回 過度に高額な違約金

民法(以下略)第250条第1項には「当事者は、債務者が債務を履行しない場合に債務者が支払う違約金について合意できる」と規定されており、実務上も契約書において違約金について定めることが多くあります。そして、違約金に関して当事者が合意した場合、債務を履行できなかった者は、原則として合意に従って違約金を支払わなければなりません。しかし、これを徹底すると、契約締結時に不利な内容を受け入れざるを得なかった弱い立場の者を救済できません。そこで第252条では「約定違約金が過度に高額である場合、法院(裁判所)は違約金を相当の金額に減額できる」とされています。

この規定の文言上、裁判所が職権で違約金を減額することのみを規定しているように読めますが、最高法院79年台上字第1612号民事判決によると、債務者から裁判所に対して違約金の減額を請求することも可能とされています。また、これらの違約金に関する規定は、第253条により「契約違反に関して約定した金銭以外の給付」についても準用されています。

自由意思なら問題なし

第252条の規定に関し、最高法院104年度台上字第984号民事判決によると、損害賠償的違約金は「債務不履行により生じた損害の賠償総額」であるのに対し、懲罰的違約金は「債務の履行を強制する目的で、債権の効力を確保する強制罰であり、債務不履行時、債権者は違約金の支払いを請求できる他、債務の履行または不履行の損害賠償を請求すること」ができます。このことから、「約定した違約金が過度に高額であるか否かについて、損害賠償的違約金は、債権者が受けた損害を主要な根拠とし、懲罰的違約金は、債権者が受けた損害を唯一の査定基準とせず、とりわけ債務者の違約の情状を参酌してこれを判断すべきである」とされています。

なお、最高法院79年台上字第1915号民事判決によると、約定した違約金が過度に高額な場合であっても、債務者が自由意思で任意に給付をし、自発的に約定に基づいて履行したと認められる場合には、その返還を請求することが許されないとされています。


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執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。