第93回 フィリピンにおける地域統括本部の設立

皆さん、こんにちは。Poblacionです。以前のコラムで、フィリピンにおける子会社の設立(第24回)、支店の設立(第27回)、及び 駐在員事務所の設立(第89回)についてお話しました。今回のコラムでは、フィリピン国内に事業所を構えることを希望する投資家の選択肢となり得る他の2つの投資手段、すなわち、地域統括本部(RHQ)と地域経営統括本部(ROHQ)について、お話しましょう。

RHQ及びROHQとは?

RHQ及びROHQとは、アジア太平洋地域及びその他外国市場に所在する関連会社、子会社又は支店との取引を主に行う、外国企業の事業所です。RHQとROHQの主な違いは、RHQには、フィリピン国内で収益を上げることが認められていなく、本社からの全面的資金援助を受けるのに対し、ROHQには、その関連会社、子会社又は支店との取引から収益を上げることが認められている点です。

RHQ及びROHQ がフィリピン国内で実際に実施できる活動とは?

RHQは、地域内に所在する子会社、支店又は関連会社のための監督、通信及び調整本部としてのみ機能します。RHQがフィリピン国内の子会社又は支店の経営に参加したり、商品又はサービスの勧誘や売込をしたりすることは認められません。子会社、支店又は関連会社以外の企業と取引することも、RHQには禁止されています。

これに対しROHQには、RHQよりも比較的広範な活動の実施が認められています。ROHQには特に、以下の「基準内サービス」を関連会社、子会社及び支店に対して行うことが許可されています。

•一般的管理及びプランニング
•ビジネスプランニング及び調整
•原材料及びパーツの確保/調達
•企業財務顧問サービス
•市場管理及び販売促進
•訓練及び人事管理
•物流サービス
•研究と開発/製品開発
•技術支援及び保守
•データ処理及び通信
•ビジネス開発

ただし、ROHQの場合もRHQと同様に、関連会社、支店又は子会社以外の企業にサービスを提供することは禁止されています。

フィリピン国内にRHQROHQを設立する場合の資本要件は?

RHQには、5万米ドル(又は外国通貨におけるその等価額)以上の設立資本金がなくてはなりません。RHQは、フィリピン国内で収益を上げることはできませんので、フィリピンにおけるその事業活動費用をカバーするために、本社から毎年5万米ドル(又は認められている外国通貨におけるその等価額)以上の送金が行われなければなりません。

一方、ROHQの最低資本金額は、20万米ドル(又は認められている外国通貨におけるその等価額)です。ROHQの場合、RHQとは異なり、その事業活動を支援するために本社から毎年送金する必要はありません。

RHQ及びROHQを設立するメリットは?

外国企業によるフィリピン国内拠点の設立を促すため、RHQ及びROHQには様々な経済的及びその他の奨励措置が認められています。

特にRHQは、(フィリピン国内で収益を上げないことから)所得税を免除され、フィリピン国内における購入についても0%という付加価値税率が適用されます。一方、ROHQには、課税所得の10%という優遇税率が適用されます。

RHQ及びROHQのいずれも、土地の改良及び装置に対する不動産税を除き、地方政府が課すあらゆる種類の地方の公租公課及び課徴金を免除されます。さらに、フィリピン国内で入手できない訓練及び会議用の装置や資料を輸入する際の関税も、免除されます。

上記のような奨励措置を享受できるのは、RHQ及びROHQの組織自体だけではなく、そこで働く外国人スタッフも対象となります。RHQ及びROHQに雇用されている外国人には、総所得に対して15%の源泉徴収税という特別税率が適用されます。ただし、同じ職位についているフィリピン人従業員に同じ恩恵を与えることが条件となります。また、RHQ及びROHQに雇用されている外国人とその扶養家族は、特別に、3年間数次入国ビザの発給が受けられます。さらに、身の回り品や家財のフィリピンへの持ち込みについても、免税となります。

以上より、フィリピンで事業を行おうと考えている方には、RHQ及びROHQの設立は、ニーズに応える選択肢の一つとなり得るでしょう。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。