第345回 種類株式

 台湾では、日本と同様に、普通株式とは権利内容の異なる種類株式を発行することが可能です。種類株式を発行するには、以下のような権利内容を定款に具体的に明記する必要があります(会社法第157条第1項)。

 下記④~⑦については、従来、閉鎖性株式会社に限り認められていましたが、2018年11月1日に施行された改正会社法により、一般的な株式会社についても認められるようになりました。ただし、株式公開発行会社は、下記④、⑤、⑦および複数普通株式に転換可能な種類株式の発行が認められません(同条第3項)。

①種類株式への利息および配当の割当順序、割当額または割当率
②種類株式への会社の残余財産の割当順序、割当額または割当率
③種類株主の議決権行使の順序、制限または議決権がないこと
④複数議決権種類株式または特定事項への拒否権付き種類株式
⑤種類株主の董事、監察人への選任禁止もしくは制限、または一定人数の董事選任権
⑥種類株式から普通株式への転換比率、方法または転換計算式
⑦種類株式の譲渡制限
⑧種類株式の権利・義務のその他の事項

 上記④の特定事項への拒否権付き種類株式について、経済部の解釈(経済部108年1月4日経商字第10702430970号書簡)によると、拒否権を行使できるのは株主総会の決議事項に限られ、支配人の選任・解任および報酬のように、法律により董事会の決議事項とされているものについては、拒否権を行使することができません。また、会社の正常な運営を維持するため、種類株主は、董事選挙の結果についても拒否権を行使することができません。

 さらに、種類株主が特定事項について拒否権を行使するタイミングについて、法律関係が未決になるのを避けるため、当該事項について検討されている株主総会中に拒否権を行使しなければならないとされています。また、種類株式の発行条件として「株主総会後に行使することができる」旨を約定した場合についても、法律関係を早期に確定させるため、株主総会開催後、合理的な期間内に行使すべきであるとされています。

種類株式は償還可能

 自己株式の取得は原則として認められておりませんが、種類株式については、会社により償還することが認められています(会社法第167条第1項本文、第158条本文)。ただし、種類株主が定款に基づき有する権利を害してはならないとされています(同法第158条ただし書き)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。