第372回 裁判離婚の請求原因とその期限

元卓球日本代表の福原愛さん(32)が日本に帰国中、知り合いの会社員男性と横浜中華街に行ったり、同じホテルに宿泊する様子が撮影され、不倫疑惑が浮上しています。この件について、福原愛さんは、一緒の部屋に宿泊した事実はないと否定しているものの、一部では、既に離婚協議に入っているとも報道されています。

 台湾では、日本と同様に、協議離婚のほかに、裁判離婚という方法があります。協議離婚は、夫婦が話し合いにより離婚の合意をするもので、その理由にかかわらず離婚することができます。

 これに対し、裁判離婚の請求をする場合には、民法第1052条に列挙される以下の離婚事由に該当する必要があります。

(1)重婚
(2)配偶者以外の者と合意で性交
(3)夫妻の一方が他方に対し同居に堪えないほどの虐待を与えた
(4)夫妻の一方が他方の直系親族を虐待した、または夫妻の一方の直系親族が他方を虐待し、共同生活をするに堪えなくなった
(5)夫妻の一方が悪意で他方を遺棄し、その状態が継続している
(6)夫妻の一方が他方の殺害を企図した
(7)治療不可能な悪疾がある
(8)治療不可能な重大な精神病がある
(9)3年以上にわたり生死が不明
(10)故意による犯罪により6月を超える懲役に処せられることが確定
(11)上記以外の重大な事由があり、婚姻を維持し難い場合

裁判離婚請求の期限

 しかし、台湾法には、日本法にはない裁判離婚請求についての期限が規定されています。民法第1053条により、上記(1)(2)の事由がある場合でも、他方が当該事由に事前に同意していた、もしくは事後にこれを許したとき、当該事由を知ってから6カ月が経過したとき、または当該事由の発生から2年が経過したときは、離婚請求をすることができません。

 また、民法第1054条により、(6)(10)の事由がある場合でも、当該事由を知ってから1年が経過したとき、または当該事由の発生から5年が経過したときは、離婚請求をすることができません。

 なお、判例によると、これらの期間は除斥期間であるため、消滅時効のように一時的に中断させることはできず、当該期間を過ぎてしまうと、裁判離婚を請求することができなくなってしまいます。

 以上のように、台湾では、日本と異なり、配偶者が不倫をした場合にその不倫を理由に強制的に離婚をしたければ、不倫の事実を知ってから6カ月以内に裁判所に請求する必要があるので、注意が必要です。


執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。