第406回 不当な競争制限行為

 2021年9月、公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)が、飲食店の宅配代行サービス(フードデリバリーサービス)、foodpanda(フードパンダ)の行為は「不当な競争制限行為」に該当すると認定し、同サービスのプラットフォームに対して課徴金200万台湾元(約820万円)を科しました。

 台湾法上の不当な競争制限行為についての主な法規の根拠は、公平交易法第20条の次の規定です。

 以下の各号の行為の1に該当して、競争を制限する恐れがある場合、事業者はこれを行ってはならない。

1.特定の事業者に損害を与えることを目的とし、他の事業者に、当該の特定事業者への供給、当該の特定事業者からの購入、または当該の特定の事業者とのその他の取引を断絶させる行為
2.正当な理由なく、他の事業者に対し差別待遇を行う行為
3.低価格で誘引すること、またはその他不当な方法により、競争者が競争に参加することや競争を行うことを阻害する行為
4.脅迫、利益の提供による誘引またはその他不当な方法により、他の事業者に価格競争、結合や連合への参加を行わせない、または競争を垂直的に制限する行為
5.取引相手の事業活動を不当に制限することを条件として、当該取引相手と取引をする行為

違反箇所と理由
 今回、公平会は、フードパンダの下記の行為が上記の公平交易法第20条第5項の規定に違反すると判断しました。

1.フードパンダが、提携飲食店に対し、プラットフォームに掲載するメニュー価格は店内飲食価格と同じでなければならないと制限したこと。
 飲食店は、販売チャネルごとのコスト差異を販売価格に反映させることができなくなり、さらには、フードパンダにより開拓された顧客以外の店内飲食の顧客が、フードパンダに対する手数料を実質的に分担しなければならなくなるという不公平な結果につながる。

2.フードパンダが、「フードパンダを通じて注文した顧客は、飲食店まで自分で料理を受け取りに行くこともできる」との条件の受け入れを、飲食店に強制したこと。
 飲食店まで自分で料理を受け取りに行くことのできる顧客の大半が既存顧客であるため、フードパンダは料理を配達する運送コストを節約することができる。その一方、飲食店のために新規顧客を開拓していないにもかかわらず、手数料を取得することができる。

3.このほか、フードパンダが、さらに、飲食店から取得した手数料をもって、飲食店まで料理を受け取りに行く消費者に補助金を出した(例えば、自分で受け取りに行けば10%オフになる)こと。
 この方式により、より多くの顧客が「フードパンダで注文+自分で料理を受け取りに行く」方式を採用するようになり、フードパンダはより多くの手数料を取得するが、飲食店の利益は損なわれる。

 多くの企業が「相手方が同意しさえすれば、取引条件は全て自由に約定することができる」と誤認しています。しかしながら、本件のように、実務においては、双方の合意を経た多くの行為が、公平交易法に違反しています。

 貴社にて取引条件を設定する前に、まず、公平交易法に精通した法律の専門家に相談することをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。