第414回 飲酒運転の厳罰化

 2022年1月24日、刑法第185条の3および道路交通管理処罰条例の改正案(以下、「改正刑法」および「改正条例」)が可決され、飲酒運転に対する罰則が従来よりも厳しくなりました。今回の厳罰化の主な内容は以下のとおりです。

有期刑と罰金引き上げ

1.有期刑の上限を2年から3年に引き上げ

 従来の刑法第185条の3第1項では、呼気1リットル当たりのアルコール量が0.25ミリグラム(mg/l)以上(または血中アルコール濃度が0.05%以上)の状態で自動車を運転する行為には、公共危険罪が成立し、2年以下の有期懲役に処すと規定されていました。
しかし、改正刑法では、有期懲役の上限が3年とされました。

2.罰金刑の上限を300万台湾元(約1,240万円)に引き上げ

 従来の刑法第185条の3第1項では、有期懲役を科す他に20万元以下の罰金が併科することができると規定されていました。
しかし、改正刑法では、罰金額の上限が30万元とされました。また、改正刑法第185条の3第2項および第3項では、飲酒運転により人を死亡させ、または重傷を負わせた場合や再犯の場合にも罰金刑を併科できる旨が明記され、再犯かつ人を死なせた場合の罰金の上限額は300万元とされました。

再犯時に写真公表も

3.飲酒運転に関する再犯の期間を10年に延長

 従来の刑法第185条の3第3項では、有罪判決または起訴猶予処分確定から5年以内に同条に規定された飲酒運転の罪を犯した場合に再犯として刑罰が加重される旨が規定されていました。
しかし、改正刑法では、当該期間が10年以内とされました。

4.再犯時に氏名・写真の公表が可能になった

 従来の道路交通管理処罰条例第35条第3項の規定では、運転者が5年以内に2回以上、アルコール濃度が基準値を超える状態で自動車やバイクを運転した場合に、1回目の違反時よりも罰が加重される旨が規定されていました。
しかし、改正条例では、当該期間が10年に延長され、さらに、主管機関は再犯者の氏名、写真および違反事実を公表することができる旨が規定されました。なお、同条例におけるアルコール濃度の基準値は刑法の基準値よりも低く、呼気1リットル当たりのアルコール量が0.15mg/l以上(または血中アルコール濃度が0.03%以上)です(道路交通安全規則第114条第2号)。

同乗者にも厳罰化

5.同乗者への過料を引き上げ

 従来の道路交通管理処罰条例第35条第3項の規定では、運転者から前記4の基準値を超えるアルコール濃度が検出された場合、同乗者を600元以上3,000元以下の過料に処すと規定されていました。
しかし、改正条例では、当該過料が3,000元以上1万5,000元以下に引き上げられました。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。