第509回 「留置權」とは何か?

留置権とは

台湾の民法第928条の規定によりますと、留置権とは「債権者が他人の動産を占有しており、債権者の債権の発生と当該動産に牽連(けんれん)性があり、債権者が債権の弁済期になっても弁済を受けていない場合に当該動産を留置できる権利」をいいます。

例えば、甲が自転車を修理してもらうために乙の自転車店に持ち込んだ場合、甲が修理料金を乙に支払うまで、乙は当該自転車を留置する権利を有します。

どう実行するか

「留置権」の行使について、同法第936条は下記のとおり規定しています。

第1項:債権者は、債権の弁済期になっても弁済を受けていない場合、1カ月以上の相当の期間を定め、債務者に通知し、債権が当該期間内に弁済されない場合には留置物から当該弁済を受ける旨を表明することができる。

留置物が第三者の所有物である場合、または他の物権が当該留置物に存在する場合で、債権者がこれを知得しているとき、債権者は当該第三者または当該他の物権の権利者にも同時に通知するものとする。

第2項:債務者または留置物所有者が前項の期限までに弁済を行わなかった場合、債権者は、質権の実行に関する規定を準用し、留置物の売却代金から優先的に弁済を受けるかまたは留置物の所有権を取得することができる。

上記第2項において言及されている質権の実行に関しては、同法第893条第1項に「質権者は、債権の弁済期になっても弁済を受けていない場合、質物を競売し、その売却代金から弁済を受けることができる」と規定されています。

上記のような法制度が存在するため、実務上、債権者が債権の弁済期になっても弁済を受けていない場合、1カ月以上の期間を定め、内容証明郵便をもって債務者に通知します。当該債権が当該期間内に弁済されない場合、再度、内容証明郵便をもって「留置物から弁済を受ける」旨を表明します。弁済方法については、民法に基づく競売手続きや留置物の所有権の取得が選べるものと解されます。

以上をまとめると、債務者の動産を留置することも一つの債権回収方法として考えられます。

留置権を行使する必要がある場合には、民法により要求されている上記の行使手続きに違反しないようにするため、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。